デレバレッジ(負債削減)|Beautiful Deleveraging
経営再建は「デレバレッジ(負債削減)」を中核とする技術の一つである。デレバレッジングを実現するためには、老朽設備の活用と雇用継続による「フリーキャッシュフロー創出能力」の獲得、「EVA>0%」の早期達成、EVA>20%の目標遂行が不可欠である。
【デレバレッジとは】
- 財務レバレッジ(借入による成長や投資)を引き下げること。
- 目的は財務安定性の回復(債務償還能力・金利負担軽減)。
【経営再建との関係】
要素 | 内容 | デレバレッジとの関係 |
---|---|---|
債務整理 | 債務カット、リスケジュール、DDS(Debt Debt Swap)等 | 中核的に関与(直接) |
事業再構築 | 不採算部門の整理、選択と集中 | 間接的にキャッシュ改善 → デレバレッジ効果 |
資本増強 | 増資・DES(Debt Equity Swap)(債務の株式化) | 結果的にレバレッジ低下 |
FCF創出 | 営業利益改善・運転資本最適化 | 返済余力向上 → デレバレッジ加速 |
WACC低減 | 財務安定性向上により調達コスト低下 | ROIC − WACCの改善を狙う |
EVAスプレッドの回復 | 再上場などを目指す場合 | EVA>10%が最低条件(国内上場企業上位10%) |
【例:デレバレッジ技術の例】
- 民事再生:スポンサーがDDSやDESを用いて負債圧縮
- LBO後の再建:ノンリコースM&A/レバレッジド・バイアウトで買収 → EBITDA改善してデレバレッジ
- 信用格付回復:Debt/EBITDA比率を下げて信用力回復
【技術としての再建三本柱】
- デレバレッジ(Debt)
- キャッシュフロー創出能力再設計(Cash)
- 資本構成・株主構成の最適化(Equity)
これらは一体として機能し、「価値破壊の最小化と価値創造の再起動」両建てで目指します。
「再建とはデレバレッジである」→ × 単一では不十分
「再建は、デレバレッジを含む価値再構成の技術体系である」→ ○
経営再建とは、資本効率の回復と債務構造の健全化を通じた「デレバレッジ技術」である
― ノンリコーススポンサー支援による再建スキームの基本設計 ―
1. 経営再建:レバレッジの解消と再構成
経営再建とは、単なる費用削減や延命策ではなく、負債に過度に依存したレバレッジ構造を見直し、営業キャッシュフロー(営業CF)と資本効率(EVAスプレッド)を回復させる技術的・戦略的プロセスである。オーナーシップと実行主体が異なるケースも多いことから、スポンサーによる支援は原則としてノンリコース(Non-Recourse)型でなければ進まない。
2. ノンリコーススポンサー支援が標準となる理由
債務負担が慢性的に蓄積し、以下のような構造的問題が存在する場合:
- 借入元本が資本金増加にも関わらず拡大し続けている
- 金利負担が上昇し、返済総額(元本+金利)が営業CFを恒常的に上回っている
- 売上は2期連続の安定成長には至らず、見かけの成長も営業CF悪化によって正当化不能
この状況は実質的に民事再生に類するリストラクチャリング対象であり、追加のエクイティ調達やデットファイナンスによる外部投資家誘導は誤認を招く恐れがある。このため、スポンサーは既存資産・キャッシュフローを原資とするノンリコース再建型支援で臨むことが合理的である。
3. 基本方針:3段階のデレバレッジ設計
以下3つの柱を基本とした**10年再建計画(3年据置+7年返済の10年プラン)**を策定する。
- 支出の抑制とローコストオペレーションによるオペレーティングレバレッジ向上
→ 固定費を最小化し、売上変動に対する利益反応を強化 - 金融機関とのリスケジュール交渉による返済負担の平準化
→ 財務CFの月次過負荷を軽減し、再建資源を確保 - 営業キャッシュフロー(営業CF)改善によるフリーキャッシュフロー創出
→ 自己完結型の弁済原資を確保し、レバレッジを内部解消
4. グロースと再建の両立は原則不可
営業CFが月次で黒字化されておらず、限界利益率も不透明な中での追加のエクイティ調達やIPO戦略は、経営陣・投資家の錯誤と過信を生むリスクが極めて高い。
例外的に以下の条件を満たす場合に限り、グロースファイナンス(=レバレッジ活用)との両立は検討余地がある:
- 単月営業CF黒字化が持続的に実現されている
- ユニットエコノミクス上、EVAスプレッドが10%以上(=ROIC − WACC > 10%)
- 明確なスケール則(Law of Scale)とPMF(プロダクトマーケットフィット)が成立している(規模の経済の証明)
5. 営業・財務の再建アクションリスト(実務レベル)
項目 | 内容 |
---|---|
事業ポートフォリオ別入出金管理 | 月次キャッシュイン・アウトのリアルタイム管理 |
事業ポートフォリオ別限界利益率の把握 | 変動費と固定費の区別と限界利益率の即時把握 |
EVAスプレッド指標化 | すべての支出についてROICとWACCを対比し判断 |
プロダクトポートフォリオ評価 | 顧客セグメント・商品機能をEVAスプレッド基準で取捨選択 |
プロダクト・顧客戦略 | オペレーティングレバレッジの高い領域に集中 |
金融機関対応 | リスケ交渉の早期実行と3年据置・10年完済の合意形成 |
Beautiful Deleveraging 美しいデレバレッジ
経営再建とは、レバレッジ(負債依存)からの脱却=デレバレッジを中核とした資本効率回復のプロセスであり、その遂行は原則ノンリコース支援により、短期的な錯誤資本導入を避けた任意再生の実行によって達成されるべきである。
Beautiful Deleveragingは、債務削減とFCF創出により、「EVA>0%」を早期達成。(元本と利息の返済能力を初年度で獲得する。主に3ヶ月〜半年のプランが現実的。)
結論:The Art of Turnarounds
Beautiful Deleveragingは瀕死の企業にLAP™, PLOG™, PcLOG™を強制インストールし、ベンチマークを超えるEVA Spreadを実現するThe Art of Turnaroundsである。
その後はEVA>10%を達成し、上場企業上位10%の資本収益モデルに即座にターンアラウンドする技術である。ターンアラウンドの成功後はS&P500の上位1%の水準であるEVA>20%を狙うことができる。
ミイラとりがミイラになる
ギャンブルのように敗退した企業をまたギャンブル的手法で救済しようとするのはミイラ取りがミイラになる現象である。Twitterのようなハイイールド、ジャンク債格付けの高金利レバレッジMBOは危険であり、またマーケットが成長するのではないかという過信と誤認により命を削ってしまう選択である。JALの再建のように債権者集会の合意のもとDDS,DES,リスケジュールを実行しスポンサーはノンリコースで参加、使い古された設備と中古品で質素にデジタル再建するのでないとBeautiful Deleverageを実現することは物理的に不可能な道となる。