人間は「機能」ではなく「効用」を買っている|外的反応ではなく、内的反応を買っている
歯を磨くという複雑な行為は歯ブラシや歯磨き粉という形でチャンク化され金銭によりその習慣を交換できる。チャンク化をすることでModel, Duality, Functorが簡単に移転できる
歯磨き行為のチャンク化と構造移転
1. チャンク化とは何か:
「歯磨き」という一連の身体的・知覚的プロセス(手の動き、感覚、時間の認識、効果の期待)を、「歯ブラシ」や「歯磨き粉」といった物的オブジェクトに抽象化・圧縮し、行動単位として再構成すること。
2. Model, Duality, Functor の移転:
- Model(モデル):歯磨き行為の定型構造(例:朝起きて歯を磨く)
- Duality(双対性):主観的実践(自分で磨く)と客観的道具(歯ブラシ)との間の関係性
- Functor(関手):チャンク化された「歯磨き」という構造を、他者や他文化、他空間へと写す構造変換の対応写像
これらの効果は短期的に得られるものではなく、時間をかけて収束した時の不便さの確率を減らす。(例えば虫歯、歯周病になるなど)
3. 金銭による交換可能性:
チャンク化された行為(=道具・習慣のセット)は、金銭という普遍通貨との交換が可能となるため、習慣や行動の移転コストが劇的に低下する。
この構造は、あらゆる身体行為・習慣・文化の普遍的移転モデルに拡張可能です。たとえば「食べる」「寝る」「働く」といった行為も、すべて道具・場所・時間へのチャンク化により、Functor的移転が可能になります。
効用のチャンク化としての産業・商品構造
1. 命題:
すべての産業・商品は、「人間の複雑な欲求・行動・快楽(=効用)」を、より取り扱いやすく・交換しやすい形にチャンク化するために存在している。
2. 構造的三段論:
- Model:
効用とは、時間・空間・身体にまたがる連続的な体験である。 - Duality:
主観的な効用(例:癒し、安心、爽快)と、それをチャンク化した客観的な製品・サービス(例:アロマ、保険、冷たい炭酸水)。 - Functor:
チャンク化された効用は、貨幣と市場を通じて、他人・他国・未来へと意味構造を保ったまま移転される。
3. 分類例:
分類 | チャンク化対象 | 商品例 |
---|---|---|
食品産業 | 生存・快楽の連続的需要 | レトルト食品、中食、レストラン |
美容産業 | 自己表現・対人評価の圧縮 | ファンデーション、美顔器 |
家電産業 | 時間短縮・労力削減 | 洗濯乾燥機、全自動炊飯器 |
保険・金融 | 将来不確実性の効用コスト最適化 | 医療保険、年金積立 |
教育・学習 | 知識習得のプロセス最適化 | オンライン講座、参考書 |
4. 資本主義の本質:
資本主義とは、「効用のチャンク化と交換可能性」を無限に細分化・拡張するシステムであり、それにより個人の時間と意識を最小単位で市場に供給・循環させる構造である。
人間は機能ではなく効用を買う、たとえば歯医者であれば痛みがないことのほかに舌触りがつるつるしていること、舌触りが段ではなく滑らかになっていることなどが内的動機であり外見やイベント(孫との食事など)は副次的動機である。
人間の購買行動や選択の本質は「機能(function)」ではなく「効用(utility)」であり、効用の内的構造を正しく捉えることが本質的な価値創造やサービス設計に不可欠です。以下に整理します:
1. 人間は「機能」ではなく「効用」を買っている
◆ 表層的な「機能」例:
- 歯医者:「虫歯を削る」「歯石を取る」「ホワイトニングする」
◆ 深層的な「効用」=主観的経験の質の向上
- 内的動機(本質的効用):
- 舌で触れたときにザラザラしない → 滑らかさの安心感
- 歯が均一で噛みやすい → 食事の快適さと自然さ
- 呼吸や発音が整う → 自己認識の安定
- 口臭の減少 → 社会的不安の解消と自己肯定感
- 外的動機(社会的・文脈的な補助効用):
- 孫と食事できる → 他者との豊かな関係性
- 結婚式・写真 → イベントに向けた整え
- 清潔感 → 職場・恋愛などでの評価上昇
内的動機は現象に対する接触回数が多いため、現象に対する接触回数の少ない外的動機に勝る。
2. 機能 vs 効用の構造マトリクス
観点 | 機能(Function) | 効用(Utility) |
---|---|---|
主体 | 提供者(歯医者、製造業者) | 受け手(消費者の主観) |
評価軸 | 成果の物理的達成 | 主観的満足・情緒的変化 |
言語 | 技術用語・機械用語 | 感覚語・感情語(すべすべ、スッキリ等) |
計測方法 | 時間、回数、強度など | NPS、体験記述、定性レビューなど |
3. インサイト設計のヒント
外的動機はメインのように一見見えるが、外的反応によるフィードバックは体感時間が短いため、内的動機、毎日発生する習慣的行為の方が上位である。(例えば、口臭予防やコーヒーのステイン汚れに訴求するよりも、終わった後歯のうらの舌触りがツルツルするという方向にフィードバックを向かわせた方が習慣化する)
人間は「機能」ではなく「効用」を買っている
さらに接触頻度の少ない外的反応ではなく、接触頻度の多い内的反応を購入している
さらに内的反応をより細かく区分し、トポロジカル(場所、論理)に命名することに喜びを感じている。(ワインの香りの識別など)