ゴーイングコンサーン要件|Going Concern
会社が将来にわたって事業を継続するとの前提を継続企業の前提といい、英語ではゴーイングコンサーン(going concern)という。企業の経営破綻などを背景として、平成15年3月期から、継続企業の前提に関して経営者と監査人(公認会計士・監査法人)が検討を行うことが、監査基準の改訂等により義務づけられています。
経営者は、会社が少なくとも決算日から1年間事業活動が継続することについて重要な問題がある場合、その内容と財務諸表が継続企業の前提疑義で作成されていること(ゴーイング・コンサーン情報)を注記として記載しなければならない。継続企業の前提に関する重要な疑義を認識した場合には、これらの事象・状況を解消又は大幅に改善させるための対応策又は経営計画を策定してもなお、継続企業の前提に関する重要な不確実性がある場合には、その内容を財務諸表等に注記することになります。監査人は、これらの検討も含めて監査意見を表明することとなります。
財務諸表は企業が継続して事業活動を行うことを前提として作られており、例えば建物などの固定資産は、事業活動の継続を前提とすれば減価償却によって費用化されるが、会社の倒産を前提とする清算価値では強制処分価値で評価することになり、場合によってはゼロになってしまうこともある。
「ゴーイング・コンサーン(Going Concern)」に関する注記や意見が付された場合、上場廃止のリスクが高まる「上場廃止基準の一部」に該当する可能性があります。以下に、東証(東京証券取引所)の基準を中心に、ゴーイング・コンサーン注記と上場廃止要件の関係を整理して解説します。
📌 ゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)とは
企業が「今後も事業継続できるかどうか」を財務諸表上で監査法人や経営者が評価するもの。以下の3区分があります:
区分 | 内容 |
---|---|
GC注記なし | 継続企業として問題なし(健全) |
GC注記あり(GC重要事象) | 継続性に重要な疑義がある(将来の資金繰り等に不確実性) |
GC意見不表明 or 意見不適正 | 継続性に関し重大な不確実性があり、意見形成不能 or 不適正(深刻な状態) |
📉 上場廃止に関わる東証の基準
✅ 東証スタンダード/プライムの廃止基準におけるGCの扱い(※2023年改訂含む)
状況 | 廃止リスク | 備考 |
---|---|---|
GC注記あり(重要事象) | 即時廃止ではないが、注意喚起(注視)銘柄指定対象となる | 翌期に改善がない場合、継続企業としての前提が揺らぎ、改善報告書提出を要請される |
GCに関する監査意見不表明/不適正意見 | 原則即時上場廃止の対象 | 「上場有価証券報告書の虚偽表示・重要事項の欠如」とみなされる |
📆 実務上のスケジュール感と流れ
- 決算発表でGC注記あり(重要事象)
- 東証が当該企業を「監理銘柄(審査中)」に指定
- 翌期の改善が確認されなければ廃止の可能性
- GC意見不表明・不適正 → 即刻、整理銘柄 → 上場廃止
💡 ゴーイング・コンサーンが付く原因(典型例)
原因 | 内容 |
---|---|
資金繰り懸念 | 運転資金不足、借換不能、資金ショートリスク |
債務超過 | 自己資本比率がマイナス。改善見通しなし |
主要銀行との関係悪化 | リスケや資金引き揚げの通告あり |
損失の継続 | 数期にわたる営業赤字/純損失が継続 |
訴訟・債務保証リスク | 潜在債務が大きく、決算への影響大 |
✅ まとめ:上場廃止に結びつくGC関係のフロー
GCの段階 | 東証の対応 | 廃止リスク |
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GC重要事象(注記) | 監理銘柄指定、改善報告の要請 | 中程度(翌期の改善で回避可) |
GC意見不表明 or 不適正意見 | 整理銘柄→廃止 | 高リスク(原則即廃止) |