経営は強い刺激を求めるべきではなく、経営者は強い刺激のある習慣を避けるべきである。
経営者はエクストリームスポーツをやるべきではない。ほとんどの経営者はグローバルベンチマークを超える経営成績を実現することができない。なぜならこれは政治、地政学、大企業、消費者などの外部経済にインプットを依存しているからである。経営者は外部入力の刺激の強さによって快感を得てしまう原始的な人間の仕組みから構造的に離脱するべきである。成功したエグゼクティブの中にはフィジーク、トライアスロン、サーフィン、狩猟、ヘリコプター・セスナの操縦、スカイダイビング、潜水艦の操縦まで、普通の小学校の部活動にないような「刺激の強い」習慣を求めがちである。これはその人の駆動方式が外部入力によるものであることを示している。
経営は運動のようなものだという人もいる。しかし、真の経営は外部刺激に即反射するような、反射神経的習慣では得られない。失敗や事故を避け、安全に運行する惑星内運動のモデル設計が必要なのである。
外部の多様な刺激の強度に応じて反応する習慣をつけてしまうと強い刺激を求めるようになる。経営で重要なのは弱い刺激を探すことである。強い刺激には誰でも反応するため、競争が激しくなる。他の人が反応しないような弱いシグナルに反応すれば、簡単に優位に立つことができる。
したがって、ベンチーマークを上回ることのできる経営者に必要なことは強い刺激ではない。大食いや激辛は試さなくて良いのである。感情的な起伏もさほど必要ない。怒ったり喜んだりする伝説の経営者は伝記として語り継がれ、目立って面白いかもしれないが、利益を再現するためには冷めた目線が必要である。
経営がパチンコのような淡々としたものであると、激アツリーチがきたらレバーを叩く手に力を込め、激アツリーチが外れたら台のガラスを拳で叩いて悔しがる素人と同じである。光や音などの刺激に過度に反応する素人に対して、プロは釘の開きと回転数しか見ていない。今日連チャンしたら、素人は飲食で使い切る。記録的な連チャンしたとしても、それは確率偏差の山であるだけなので、毎回友人に焼肉をご馳走するようなプロはいないだろう。
経営の本質は「外部変数に対する反応や外部変数の制御」ではないのである。経営は「内部資源の最適化」である。外部資源はコントロール不可能である。内部資源の位置ポテンシャル階層を最適化することで負の空間を作る。そうすると外部経済から内部に「流れ」ができるのである。
サイレントプロフェッショナリズム
外部刺激に依存するドーパミン・サイクルに身を置くことは、経営判断の解像度を下げる悪しき習慣である。
経営者が目指すべきは、マシンのように淡々と内部ポテンシャルを調整し続ける「サイレントプロフェッショナリズム」である。内部空間のポテンシャル設計により負の曲率を作ることで外部エネルギーが吸引される。外部からの強烈な刺激(インプット)に依存する駆動方式を捨てない限り、真にグローバルベンチマークを超える「静かなる傑出」は訪れない。
負の空間の効能
例えば弁護士が建設業の2-3日で取れる簡単な資格を取るというのは組織内に負の曲率を作るために良いアクションである。
これは自らの内部ポテンシャルの落差を利用して、外部変数(法的紛争や施工トラブル)を未然に、かつ自動的に処理するシステムを構築することになる。外部から見れば「なぜかあの会社はトラブルが起きない(静かだ)」と見えますが、その実態は、内部に設計された強烈な曲率によって、リスクが表面化する前に「負の空間」へ吸い込まれ、中和されているということになる。

