ラグジュアリーは物性と物理的効率性を重んじる業界である
ファストファッションは1週間の最適化を考え、ハイジュエリーは100年の最適化を考える。短期主義者からすれば、ファストファッションは効率を考え、ラグジュアリーは非効率に見えるが、ラグジュアリーは一度作った作品が減価せず、積み上がっていくという観点で、100年間の効率を設計する。1週間の効率と100年の効率は5200倍もの濃度の違いがある。
つまり、ラグジュアリーは物理的効率性をもっとも重んじる業界である。
ラグジュアリーとは単なる見栄えや見栄、自己満足の話ではなく、ゴールド、プラチナの面心立方格子構造の生成条件(キロノヴァ)やダイヤモンドの正四面体構造の生成条件(地殻で生成されマグマで噴出する)のように、圧倒的なエネルギーをつぎ込み、ある一定の熱と圧力の範囲内において結晶化された構造は、宇宙空間における外部環境に依存することなく自立し、その形を保つという、マテリアルサイエンスの発見の歴史の上に立つ人類の空間設計と重力創出に関する知性の結晶である。
ルビーの99%を形成するアルミニウムはコカコーラの間に使用されているものと全く同じであり、大気圧の低圧での色は銀色だが、高圧、高熱で圧縮されると透明になる。サファイアを構成するアルミニウム、ケイ素もシリコンウエハーのような銀色であるが、高圧、高熱で圧縮されると透明になる。ダイヤモンドも炭素の塊は黒や銀色であるが、高圧、高熱で圧縮されると透明になる。
金やプラチナも、他の化学物質や鉱石と混合であれば鈍い赤色(銅の色)や黒、銀が混ざった色である。
ハイジュエリー、ハイウォッチにおいて、タイムピースやマスターピースは単なる装飾ではなく、不確実な宇宙空間において「不変の秩序」を物質化しようとする人類の知的な闘いの結晶と言える。
ラグジュアリーは価格の高いものを生み出す競争ではない。普遍的な元素構造とは何かを追求する過程で、たまたま他の財や貨幣との相対的関係性によって、相対的に高い位置での価格均衡が保たれているだけである。ラグジュアリーとは「高い価値への価格挑戦」ではなく、「エントロピーを無効化する特定空間の設計」である。

