銅のついでに金を得る|ラグジュアリーにはプライマリー<セカンダリーの稀有な財がある
1点数千万円から数百億円までの価値のある時計、ヨット、ジェット、不動産、絵画などの大型有形資産の値段が1000万円、1億円、10億円、100億円、1000万円、1兆円とスケールして行った時に行き着く道は2通りある。
- Tier1 重力の中心、土台、基盤となり、その周辺に価値が乗っていくことによってプライマリー価格よりもセカンダリー価格の方が高くなる有形資産
- 新品で直営店で買った直後に2倍〜10倍まで価値が増えることがある
- インフレ耐性があり、必ず10年で2倍の貨幣価値にはなる
- ゴールドおよびゴールドの派生商品
- Tier2 富という高い位置ポテンシャルが拡散し、プライマリー価格よりもセカンダリー価格の方が99%低くなる有形資産
- インフレ耐性がなく、インフレとともに(あるいはインフレ以上に)価値が減価していく
- UHNW、ビリオネアの99%がこの終点でスタック(停留)してしまう
重要なポイントは、この2つの有形資産は外形状は人が集まり、事業が長年運営されている点で同じように見えるということである。「価値」「時間」「密度」というパラメータにより評価することなしに、この2つの違いを明らかにすることはできない。
- 有形資産カテゴリに応じて金額レンジのキャップがある
- ワインは数千万円まで
- バッグは数億円まで
- 車は十数億円まで
- 時計は数十億円まで
- アート、ヨット、ジェットは数百億円まで
- 不動産は区分では数百億円まで。ロットでは数兆円まで
- スタートアップや株式投資は十数兆円台まで
- しかしながら「価値」「時間」「密度」という尺度を入れると、ほとんどの有形資産は買った瞬間に価値が下がる類型2のカテゴリーに所属する
一方で、数ある有形資産のカテゴリの中で、10億分の1くらいの確率。まさに、地殻や海から取れるゴールドの割合がppb(part per billion)であるのと同様、価値が全く下がらないゴールドの性質ど同様の性質を持った財がある。日本の鹿児島にある菱刈金山は世界トップで40ppm(part per billion)という1万倍くらいの濃縮度を誇るが、オートオルロジュリー(宝飾複雑時計)業界や株式市場におけるテックコンシューマープロダクツはこの40ppmのような濃度が実現する産業である。
ほとんどの財はセカンダリーで掴んだ方が安い。アルファードの新品は1000万円までかかる可能性があるが、アルファードの中古は500万円以下で手に入る。スタートアップのシリーズA,Bの株式は高いが、レイターステージまで待てば、資金繰りに詰まってほぼ0円で手に入れることだってできる。
Patek Philippe, Audemars Piguet, Richard Mille, Rolexを除く高級時計はセカンダリーで手に入れればほぼ新品同様だとしても40%引き〜80%引きで手に入る。店舗で買う理由がない商品もたくさんあるのである。
パテックであってもセカンダリーが下がってしまうモデルはある。ティア1のオートオルロジュリーのシグネチャモデルについては虎ノ門ヒルズレジデンスのような、将来周辺にたくさんの大規模開発が約束されている中心エリアのようである。虎ノ門ヒルズを中心として周辺にどんどんレジデンスや商業ビルが立ち、向こう50年の計画が予定されている。
一方でティア2の財についてはそれ以上、機能性以上の価値がつかない墓地のようである。墓所は必需品ではあるものの、転売もできないし、価値が上がることもない。たまたま周囲の土地の単価が上がることによって副次的に土地の価値が上がる港区の青山霊園のような場所もあるが、その価値の値上がりはティア1のような「生まれる」ことによるバリューではない。
ティア1はまさにキロノバで生まれる金(きん)のようなものであり、それ以外の財は「金(きん)」以外である。金以外の財には財自体の元素としてのエネルギーが金に劣るため、相対的に金にエネルギーを取られてしまう。時計、アート、ヨット、ジェット、株式だとしてもそのほとんどは、資本家という高い位置ポテンシャルを持った集団からエネルギーを吸い取るだけの墓場である可能性の方が高いのだ。仮に墓場なのに価値が上がっているように見えたとしても、それは「生まれる」「上がっていく」エネルギーではなく、どちらかというと「死ぬ」「落ちていく」エネルギーに近い。したがって、早死にのアーティストが評価されるというのはティア2の資産の再頂点を示しているのである。ティア1とティア2は店頭やオークション会場ではどちらも同じような見た目、同じような価格に見える。そしてティア2資産でも価格が数十億のものはたくさんある。そして、どちらも、買う時点では高い位置エネルギーを持つ。しかしエネルギー生成方法が違うため、「価値」「時間」「密度」というメガネで帰結を観察すると、ティア1は自然と上がっていくため、下がらないための努力は必要なく、価値を上げるための努力も必要がない。
ティア2資産カテゴリーは下がらないための努力をしてやっと価値が保全できるがそれも間に合わず、落ちるエネルギーを保持することができずに結局どんなに頑張ったとしても価値が下がることを食い止められないことの方が多い。
銅山で取れる鉱石は100万分の1、ゴールドを含むことがあるが、100トンの銅に対して、1kgの金が取れるとして、100トンの銅と、1kgの金は同じ価格である。銅の精製プラントの主要収益源は金である。100トンの銅は10トントラック11回分の輸送費であり、ロジスティクスも数十人体制である。一方、1kgの金はプリウスのようなコンパクトカーでさえ運べるし、一人で運べる。銅は値上がりも値下がりもするため、100トンの鉱石を輸送し、精錬し、出荷するまでの一連のバリューチェーンにリスクが付随する。一方金は銅を生成する過程で自然と沈澱するため、「ついで」に取れる。
金はそのエネルギー含有量が他の元素とは根本的に異なるため、金自体に莫大なエネルギーが潜んでおり、それを獲得するために使うエネルギーは思いの外「楽」なのである。
金と銅を比べると金はTier1、銅はTier2である。Tier1の金1kgと、Tier2の銅100トンは同じ値段である。しかし、金の粗利益が90%に比べて、銅の粗利益は10%である。全く別の内部構造を持ったものが、外径から見ると全く同じように見えるという良い例である。
銅(Cu 29)の分離で電極を利用するときに金(Au 79)が自動的に沈澱する。金や銀は電解アノードスライムから回収できる。(Gold Recovery from Electrorefining Anode Slimes)金は銅の電解精製では 溶解せずに沈殿する ため、直接的なコストほぼゼロで集まる。
Tier2資産の中にも、Tier1資産をついでに得られる「ブリッジ」的な性質を持つTier2 Superのような資産がある。住友グループが日本2位の財閥になれたのは銅山を得て、そのついでに金山を得たからである。三菱も三井も、チリなどで銅鉱石のコンセントレートを買い付けする権利を確保して、ついでに金を生成できるようになり、日本1位、3位の財閥になった。三菱、住友、三井とそれ以外を分けるのは「ゴールド」というTier1資産を偶然得られるポジションになれたか否かである。
銀は1000ppmくらい算出するものであるが、銀以外の鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、硫化鉱など毒性もあり皇帝が複雑になる。一方、銅は銅コンセントレートの30%くらいが銅である。金鉱石に対する銀鉱石は100倍の濃度があり、銀鉱石に対する銅鉱石はさらに100倍の濃度がある。(銅鉱石の1%程度が銅)
| 元素 | 地殻濃度 | 鉱床の典型濃度 | 最大例 |
|---|---|---|---|
| 銅 | 50–70 ppm | 0.3–1%(3–10 ppk) | 2%超 |
| 銀 | 70–100 ppb | 50–500 ppm | 1〜5 ppk |
| 金 | 1–4 ppb | 1–5 ppm | 50+ ppm(菱刈など) |
| 元素 | 地殻 → 鉱床での濃縮倍率 |
|---|---|
| 銅 | 約 50〜200倍 |
| 銀 | 約 500〜5,000倍 |
| 金 | 約 1,000〜50,000倍 |
| 種類 | Au | Ag | Cu | Pd/Ni | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| 18K YG | 75% | 12.5% | 12.5% | — | 最も自然な黄金色 |
| 18K RG(RG/PG) | 75% | 2.5–5% | 20–22.5% | — | 赤みのあるローズカラー |
| 18K WG(Pd系) | 75% | 5–10% | 少量 | Pd 10–15% | 高級WG、白さが柔らかい |
| 18K WG(Ni系) | 75% | 5–10% | 5–10% | Ni 10–15% | 強度高いがアレルギー注意 |
ローズゴールドやイエローゴールドは銅(Cu)のついでに金(Au)を得るというコンセプトが感じられる良いマテリアルである。銀鉱山から金を取るというやり方もあるが、銅鉱山から取る方が効率が良い。
Freeport-McMoRan が所有する インドネシアGrasberg Copper Gold Mineの鉱業許可区域(contract area) は24,700ヘクタール = 247 km²で、ここから毎年100トン近くの金が取れる。一方、日本の菱刈銀山ではたったの50ヘクタールでも金が年間5トンくらい取れている。
50ヘクタールでとうもろこしを育てても年商1億円である。じゃがいもを育てても年商10億円である。金を取れば、純利益で100億円超になる。じゃがいもの1000倍効率的である。
鉄は金、銀、銅よりもさらに取りやすく、地殻:5% 鉱床:30〜60%である。
| 元素 | 地殻濃度 | 鉱床濃度 | 濃縮倍率 |
|---|---|---|---|
| 鉄(Fe) | 50,000–60,000 ppm | 300,000–600,000 ppm | 6〜12倍 |
| 銅(Cu) | 50–70 ppm | 3,000–10,000 ppm | 50〜200倍 |
| 銀(Ag) | 0.07–0.1 ppm | 50–500 ppm | 500〜5,000倍 |
| 金(Au) | 0.001–0.004 ppm | 1〜5 ppm | 1,000〜5万倍 |
しかし、金は鉄の近くにいる性質を持っていないため、鉄のついでに金を得ることはほぼない。隕石が落ちたなどのパターンなどレアなケースである以上、鉄はSuper Tier2とは言えないのである。ダイヤモンド、ルビー、サファイアも人工的に生成可能な点で金のTier1性は有していない。ただし、ナチュラルダイヤモンド、ピジョンブラッドルビー、カシミールサファイア、メリノウールにおけるRecord Baleなど、人工ではコスト効率的にたどり着けないような部類のものはSuper Tier2と言えるだろう。

