勝利体質は伝染する|収益力の伝播可能性

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勝利体質は伝染する|収益力の伝播可能性

カマキリの腹部に寄生するハリガネムシは、カマキリが水に飛び込みたくなるように視覚反応を変化させるたんぱく質を生成するそうだ。カマキリは本来水が苦手だが、あるタンパク質が生成されると水がキラキラして飛び込みたくなるそうだ。水の中でカマキリは死ぬがハリガネムシは繁殖する。

🧬 視覚と認識を変える“生物的モデル”から組織の学習構造を考える

昆虫に寄生するハリガネムシ(Spinochordodes tellinii)は、宿主であるカマキリの中枢神経系に作用し、水に対する回避反応を抑制し、水を求めて飛び込むような行動変容を引き起こす。
この行動の変化には、寄生虫由来の分子(たとえば神経伝達物質様の化学物質や、宿主の神経伝達に影響を与える宿主修飾分子)が関与していると考えられる。

本来、水を避けるカマキリが“水がキラキラして魅力的に見える”ような感覚の変容を起こすのは、
視覚処理の上流にある神経ネットワークの情報の優先度が改変されている可能性を示唆する。

💹 ROIC 100%超への“気づき”も、類似の“認知的可塑性”によるものか?

ROIC(投下資本利益率)が100%を超えるようなビジネス機会は、客観的には極めて希少で魅力的だが、多くの人にとっては**「見えていない」かのようにスルーされる現象**がある。年商1兆円を超える企業は日本に200社ほどあるが、年商1兆円にまで急激に膨らむのは180万社中たったの200社、確率ではざっくり1万分の1である。1万分の1しか起きないようなことが起こったから年商1兆円に到達したということなので、実はそのような企業の中を探すとROIC100%の事業が必ず一つは見つかる。しかし、当事者、ROIC100%の事業を運営している社員自体がそれに気づいていないという不思議な現象が起きているのである。

これは単なる情報不足や能力不足ではなく、“選択的注意”や“認知的盲点”に近い現象であり、一種の後天的に形成される知覚・判断バイアスとも言える。

ROIC100%を超えるような奇跡的な事業を見つけることで会社は大きくなるということを経験的に知っているにも関わらず、あらゆる取締役会はROIC10%という平均よりも少し上くらいの目標を提示するのである。(それでもROIC10%ですら達成できない)

🧠 “見える”ようになるとはどういうことか?:神経可塑性と後天的学習

「ROIC100%の景色」が“見える”人と“見えない”人の違いは、IQや知識量以上に、感覚入力に対する情報処理ネットワークの構築状態の差異にあると考えられる。

これは、赤ちゃんが自分の手を見つめて動かし始める「hand regard」の発達段階に類似:

自らの手を“視覚で認識”し、“意識的に動かせる”ようになるというプロセスは、新たな神経ネットワークの構築と、それを支える遺伝子発現とシナプスの強化に依存している。

同様に、ROICという指標を「見える・使える」ようになるためには、認知レベルでの再配線(re-wiring)と継続的なシナプス可塑性による強化学習が必要。

この認知、運動を反復する過程では、mRNAの転写・翻訳を介したタンパク質合成(たとえば神経成長因子、受容体、酵素類)が伴うことがわかっており、実際に学習や判断力の獲得には分子的な基盤(遺伝子→タンパク質)が関与している。

🧩 ROICという“認知スキル”の組織内感染モデル

ROICを“見えるようになった”個人が、その知覚・判断様式を周囲に伝播していく現象は、神経系の“模倣回路(mirror system)”と社会的学習、反復運動の構造に近い。

このような伝播は、ウイルスのような生物学的“感染”というよりは、**認知的な再構築が波及する“神経生理的なエピジェネティクス”**とも表現できる現象である。

🌐 Profit Epidemic ≠ 生物感染

ROICの「伝染」は、あくまでメタファーであり、プリオン病(狂牛病)やヒトに感染したヤコブ病のような実際の“タンパク質の伝播”とは異なる。また、実際にウイルス / 寄生虫などの物質が感染しなくても、刺激を与えることで伝染していくという点では、ウイルスや、寄生、感染というのもメタファーである。

認知パターンの後天的学習が広がる過程は、以下のような要素を含む:

  • 外部入力(認識) → 神経可塑性 → タンパク質発現 → 行動変化
  • 環境(組織文化)が“学習可能性”を高めるか抑制するかが重要

🛡️ ROICが伝わらない「抗体」的構造とは

  • 官僚主義、旧来の評価制度、社内政治、分断されたKPIなどは、
    “認知再構築”を阻害する認知免疫構造とも言える。

これらを**「抗ROIC環境因子」**として整理すれば、「認知的なROIC伝播率」を上げるには、制度の可塑性(≒神経の可塑性)を高める組織設計が必要。組織内の妙な抵抗力があると、発見も、模倣も、学習も、反復運動も発生しないということである。自由意志を尊重した環境(可能性、可動域)そのものが重要ということである。

結論

ROIC 100%のような経済的価値に「気づける」かどうかは、生得的な能力差というより、後天的な学習環境、認知訓練、ネットワーク再構築による模倣反復可能性に依存している。

その過程は、神経可塑性、シナプスの強化、さらにはタンパク質合成を伴う分子機構が関与する点で、
hand regard(自己認識の獲得)や運動スキルの習得に極めて近い。獲得した形質が日々の生活にプラスの影響を与えているのであれば、それは報酬の連続とともにHabit Loopと化する。

組織の収益性判断力は“認知可塑性”と“文化的伝播力”に支えられた、再現可能性の高い環境構築技術であり、その環境下で流通される技術は可視化・習得可能なスキルである。環境設計と発見、習得、模倣、再訓練によって広範に拡散・強化することが可能である。