Juan Maldacena フアン・マルダセナ
1. 最大の功績:AdS/CFT対応
1997年にフアン・マルダセナが発表したこの理論は、現代物理学で最も引用される論文の一つです。
- ホログラフィー原理: 3次元のステッカー(2次元の膜)に光を当てると3次元の像が浮かび上がるように、**「重力のある高次元の宇宙は、その境界にある重力のない低次元の量子力学と同じものである」**という驚くべき等価性を示しました。
- 宇宙の記述: * 内部(AdS空間): 重力が働き、時空が曲がっている。
- 境界(CFT): 重力はなく、平坦な空間で量子力学的な粒子が動いている。
- 結論: この2つは「同じコインの表裏」であり、難しい重力の問題を、慣れ親しんだ量子力学の問題に書き換えて解くことができるようになりました。
2. 「ER = EPR」:ワームホールと量子もつれ
近年、マルダセナが提唱したアイデアが 「ER = EPR」 です。
- ER(アインシュタイン=ローゼン橋): 一般相対性理論における「ワームホール(時空のトンネル)」。
- EPR(量子もつれ): 量子力学における「離れた粒子同士が瞬時につながる現象」。
- 主張:「量子もつれとは、実はミクロなワームホールで時空がつながっていることそのものである」。
- これにより、バラバラだった「量子力学」と「一般相対性理論(重力)」が、実は同じ現象の異なる側面であることが示唆されました。
3. 宇宙をどう見るか?
二人は同じ「時空の終焉」の立場をとりますが、登り口が異なります。
| 特徴 | フアン・マルダセナ | ニマ・アルカニ=ハメド |
| 視点 | **境界(表面)**から見る | **幾何(構造)**から作る |
| キーワード | ホログラフィー、量子情報 | アンプリチュードヘドロン、組合せ論 |
| 時間の扱い | 複雑性(Complexity)指標 | 時間そのものが派生的な「影」 |
| 数理的背景 | 弦理論、共形場理論 | HoTT(型理論)、正の幾何学 |
- マルダセナ: 「宇宙の境界にある情報のつながり(量子もつれ)が、時空という布地を編み上げている」と考えます。
- アルカニ=ハメド: 「時空も量子力学も、背後にある抽象的な多面体(幾何学)の体積を計算した結果に過ぎない」と考えます。

